【価格改定続出?】タングステンの高騰が止まらない!機械刃物がまた値上がりするかも【チップソー、ビット、カッター】

「また値段が上がった…」そんな声が木工・建築業界で相次いでいます。チップソーやルータービットに使われる超硬チップの主原料「タングステン」の国際価格が、2025年以降に急騰しているためです。この記事では高騰の背景・影響を受ける製品・今すぐできる対策をわかりやすくまとめました。

目次

タングステンとは?機械刃物との関係

タングステン(元素記号:W)は、融点が約3,422℃と全金属中で最も高く、常温でも非常に高い硬度・耐摩耗性をもつ希少金属(レアメタル)です。機械加工の世界では、タングステンカーバイド(WC:炭化タングステン)をコバルトで焼き固めた「超硬合金チップ」として刃物に組み込まれています。

原材料加工品最終製品(刃物)
タングステン鉱石
世界産出の約80%が中国産
超硬合金チップ(WC-Co)
タングステンカーバイド+コバルト
✔ チップソー(兼房・スギヤマ・中日特殊刃物)
✔ ルータービット(大日商)
✔ 超硬カッター・ドリルビット

💡 ポイント:チップソーの刃先「超硬チップ」にはタングステンが直接使われています。タングステン原料費はチップソー製造コストの大きな部分を占めるため、原料価格の上昇が製品価格に直結します。

タングステン国際価格の推移(2021〜2026年)

タングステンの国際指標価格はAPT価格(Ammonium Paratungstate、単位:MTU=10kg)で表されます。以下は2021年〜2026年Q1の推移です。

タングステン APT国際価格推移(2021〜2026年Q1) 2021年の約$285/MTUから2026年Q1には約$1,787/MTUへと急騰。2025年2月の中国輸出規制以降の急上昇が顕著。 $0 $500 $1,000 $1,500 $2,000 APT価格($/MTU) $285 2021年 $312 2022年 $315 2023年 $342 2024年 $533 2025年 ↑2025年2月 中国輸出規制発動 $1,787 2026年Q1 通常水準 規制後(急騰) 2026年Q1(最高水準) タングステン APT国際価格推移(2021〜2026年Q1)
※ APT国際価格。2025年は前後半の平均値。出典:Metal Bulletin / Fastmarkets等の公開データをもとに松田機工が作成。
年/期間APT価格($/MTU)2021年比主な要因
2021年$270〜300基準コロナ禍からの回復
2022年$300〜325+約15%製造業需要増・エネルギーコスト上昇
2023年$310〜320+約10〜15%横ばい〜微増
2024年$310〜375+約15〜25%半導体・EV需要増、地政学リスク
2025年前半$355〜490+約40〜65%⚠ 2025年2月 中国輸出規制発動
2025年後半$490〜800+約70〜170%規制継続、代替供給源の不足
2026年Q1$1,325〜2,250+約400〜650%規制強化・投機的買い・円安加速

🚨 2026年Q1時点で、タングステン価格は2021年比で最大約650%(7.5倍超)に達しています。これは機械刃物業界にとって、かつてない原材料高騰です。

タングステンが高騰する4つの理由

① 中国による輸出規制の発動(最大要因)

世界のタングステン生産量の約80%を中国が占めています。その中国が2025年2月、タングステンを含む戦略的希少金属の輸出規制を発動。需給バランスが一変し、国際価格が急騰しました。この規制は米国・EUとの貿易摩擦・技術競争を背景としており、短期的な緩和は見込みにくい状況です。

② 半導体・EV・航空宇宙での需要急増

タングステンは超硬工具だけでなく、半導体製造装置・電気自動車(EV)部品・航空宇宙部品にも使われます。世界的な製造業の回復・脱炭素投資の拡大により需要は構造的に増加しており、木工刃物は半導体産業とタングステンを奪い合う構図になっています。

③ 代替供給源の開発遅れ(地政学リスク)

ベトナム・カナダ・ロシアなどにもタングステン鉱山はありますが、中国産の代替となる規模での供給には数年単位が必要です。鉱山開発・精製設備の整備には莫大な投資と時間がかかるため、中短期的な供給不足は解消されません。

④ 円安による日本国内価格への二重の打撃

タングステンはドル建てで取引されます。国際価格の上昇に加え、円安(1ドル=150〜159円台)が続くことで円換算コストがさらに押し上げられています。日本の刃物メーカーにとっては「ドル建て原料高」と「円安」のダブルパンチです。

値上がりが続く刃物製品とメーカー

超硬チップを使用する機械刃物の多くが価格改定の対象になっています。弊社で主に取り扱っているメーカーをご紹介します。

チップソー(木工用・樹脂用)

兼房

創業1914年。国内チップソー市場をリードする老舗メーカー。精密研磨技術と超硬チップの品質で業界標準を確立。

  • 木工用チップソー(合板・無垢材・集成材用)
  • 非鉄金属用チップソー
  • 建材・窯業サイディング用
  • ダイヤモンドチップソー
  • 各種チップカッター
  • 各種ルータービット

スギヤマ

木工・建築業界から信頼を集める国産チップソーメーカー。コストパフォーマンスの高さと安定した切れ味が特長。

  • 木工用チップソー(無垢・合板・MDF)
  • 横切り盤用・テーブルソー用
  • 丸鋸盤用各種径

中日特殊刃物

特殊用途・高精度加工に特化した日本製チップソーメーカー。アルミ・樹脂など難削材にも対応したラインナップ。

  • アルミ・非鉄金属用チップソー
  • プラスチック・アクリル用
  • 複合材・ラミネート材用

※在庫は変動します。お急ぎの場合はお電話でご確認ください。

ルータービット・トリマービット(面取・コーナービット・ストレート)

大日商

木工用ルータービット・トリマービット専業メーカー。超硬チップを刃部に使用した高品質ビットで、家具製作・建具加工・内装工事に幅広く使われています。価格改定の影響を直接受けているメーカーの一つです。

面取ビット

木材・MDF・合板の角を斜めに面取り。家具・建具の仕上げに不可欠。

コーナービット

木口にR面や飾り面等を付ける。安全性・意匠性向上に使われるビット。
ボーズ面、ギンナン面、U溝ビット等多種有り。

ストレートビット

溝加工・欠き取りの基本ビット。ダボ穴加工棚溝加工に幅広く使用される定番品。

今すぐできる対策・まとめ

タングステン高騰は短期的に収束しにくい構造的な問題です。ユーザーが今できることを整理しました。

✅ 対策① まとめ買い・早期確保

価格改定前の購入が最も直接的な節約策です。使用頻度の高いチップソー・ビットは現行価格のうちに購入するのも検討してみてください。

✅ 対策② 刃物のメンテナンス・再研磨の検討

現在使用中の刃物を適切に再研磨することも有効です。(ビット類も研磨可能)切れ味が落ちた刃物は研磨業者に依頼することで再使用できます。
ちなみに弊社でも自社で研磨しております。

✅ 対策③ 適切な刃物選びでコスト管理

加工材・機械に最適な刃物を選ぶことで寿命が延び、交換頻度を下げられます。「安い刃物を頻繁に交換する」より「適切な刃物を長く使う」がトータルコストを抑えます。
例:PRO-K→PRO-MAXⅡへ変更で長切れするように改善。交換頻度も少なくなる。(無理に使うのはNG)

✅ 対策④ 価格改定情報を早めにキャッチ

改定直前は在庫が切れやすくなります。各購入されてる販売店や、SNS等の情報をチェック。

📌 この記事のまとめ

  • タングステン価格は2025年2月の中国輸出規制を機に急騰し、2026年Q1は2021年比で最大約650%超
  • 超硬を使うチップソー・ルータービット・カッター類はすでに値上がりが続いており、今後も改定が見込まれる。
  • 対策は「早期在庫確保」「メンテナンス活用」「適切な刃物選び」の組み合わせが有効

よくある質問(FAQ)

タングステンはなぜ高騰しているのですか?

主な原因は2025年2月に発動した中国のタングステン輸出規制です。中国は世界生産の約80%を占めるため、輸出規制が即座に国際価格に影響しました。半導体・EV需要の増加、代替供給源の不足、円安も価格押し上げ要因となっています。

チップソーやルータービットの価格はいつ上がりますか?

兼房・スギヤマが4月に値上げ。中日特殊刃物が5月、大日商が5月と6月の予定です。2025〜2026年にかけて複数回の改定が行われています。最新情報がわかれば更新します。

タングステンの価格はいつ落ち着きますか?

中国の輸出規制が緩和されない限り、高水準が続く見通しです。代替供給源(ベトナム・カナダ等)の本格稼働には数年単位が必要なため、中短期的な価格下落は見込みにくい状況です。

超硬を使わない刃物に切り替えられますか?(鉋刃)

鉋刃に関しては木工においてはハイス(H-E、ハイスピード鋼(HSS)製)に切り替えることはできます。超硬より耐久性・加工精度が劣る場合がありますが、綺麗に切削が出来るので弊社のお客様は比較的ハイスの木材加工事業者が多いです。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次